2011-01-01から1年間の記事一覧

あおいろの記憶

思い出してほしい きみが小さいころ 海はどんなだったか きみは川とどんなふうに 遊んだか わたしは海に生まれ 海と川で育った 海の深みの色は恐ろしい青で 小舟はその上をギシギシと進んだ 深い海の底で眠る龍が目覚めないかと心配した 川の向こうには やは…

じいちゃんの展示会

じいちゃんの展示会の日が近づいている。 最近、頭を抱えるじいちゃんの姿を見ることが多くなった。 じいちゃんは、海から流木を拾ってきては、いろんなものを作っている。知り合いの陶芸家から「陶芸祭りに合わせて展示会をしませんか」と誘われた。それで…

哲ちゃんの十五夜

庭にゴザをしいて 机を並べる 料理がのせられる 大皿の刺身が三つ 小魚をすりつぶして油で揚げたものと ボラのフライの皿が三つ ナスとタコの味噌炒めの皿が三つ 月が地上の雲からはなれ 顔を出す 鹿の生肉の刺身が差し入れられ 塩茹でのピーナッツがある 茹…

賭け

夜の道を車で走っていたらお巡りさんが検問していた。当然、止められた。いかにも真面目そうな若いお巡りさんが近づいてきた。 「飲酒の検問です。これにハーしてください」ときた。いつものセリフだ。 「ハーするのはいいけど、その前におれと賭けしない?…

十三夜姫

十三夜の月を写真に撮ろうと駐車場に出て三脚を据えた。 三脚にカメラをセットして、さて撮ろうとするが、台風13号から変わった熱帯低気圧のせいで、次々に雲がかかる。シャッターボタンに人さし指をのせたまま、雲と月と、にらめっこが続く。 そんなとき…

鹿児島大学に佐藤教授がいます。

干潟に生息するゴカイなどの「ベントス」が専門です。 今日、八代からのフェリーで天草へ来ました。松島の船着き場まで迎えに行き、一路河浦へ。路木ダムの建設現場をまず見て、一言。 「これはひどい」 山肌はいよいよ削られ、コンクリートプラントが出来上…

再会

20年振りの友人がやってきた。正確には23年振りかもしれない。 彼女は我が家に2泊して、夫と二人の子どもが待つ埼玉へ帰った。 「不登校・登校拒否」の全国連絡会議が、今年は長崎県の佐世保であった。それが終わって、彼女は長崎経由で天草へ来たのだった。…

抱きしめたくて

半月の月はきらきら西の空です あなたはつましい弁当を持って出かけ 今ごろ食べているのでしょうか 夜の校舎はさみしく広く そして なにより悲しく 半月の月はきらきら西の空です わたしは 抱きしめたくて 抱きしめたくて あなたを待っているのです

定念

むかし、定念(じょうねん)という坊さんがいました。 彼の言葉が、たった一つ残っています。 「我、あらずんば、一切、無なり」 自分がいるからこの世界はあり、自分がいなくなれば世界もなくなる。そんな意味だと思います。 デカルトの、「我思う、ゆえに…

じいちゃんのそうめん 2

じいちゃんの話はまだ続く。 なぜ、四国で麺類の文化が栄えたか。 「さっき1637年といった。四国の麺の歴史は、それからさらに800年さかのぼる」 おれは頭がくらくらしてきた。 「平城京が終わり、平安京へと遷都がなされるころだ。空海という坊さんがいた。…

じいちゃんのそうめん

じいちゃんはそうめんが好きだ。 一日中そうめんでもかまわん、と言っている。 でも、そうめんを食べるダシにはこだわっている。 朝、昆布と干しシイタケを水につける。それから、寝る。 昼近くなって、じいちゃんはごそごそ動き出す。片手なべをガス台に置…

まっちゃんの机

注文を受けてから2か月から3か月がたつ。 ようやく、九割方できた。今月中には届けられるだろう。 天草の囲碁の世界で、まっちゃんの右に出る者はいない。 おそらく、この机の上でパソコンを開いて対戦相手を探すのだろう。 それから考えるのだ。 おれは、…

へのへの焼酎

へのへの焼酎の「黒ラムネ」というのがあるらしい。 「黒ラムネ」というからには、色は黒い。コップに注いでじっと見ていると、小さな泡が出てくる。それで、ラムネらしい。 原材料は、サトウキビらしいがあきらかではない。食品衛生法で原材料名の表示が義…

古い写真

古い写真を見ている。昭和20年ころから30年ころの写真だ。 青年がいる。友人と二人で一枚の写真に収まっている。たぶん、二人がいるのは、当時の船着き場だ。 季節は夏。背景は、海。 二人とも20代だろう。 彼らは、すでに80歳を過ぎた。 写真右側の…

いのち

8月になると、命について思う。 今、死にそうな叔母がいる。94歳だ。 彼女の夫は沖縄戦で戦死した。遺骨もなにも、ない。 三人の娘がいたが、長女は60歳を待たずに死んだ。天草から見れば異郷の地である尼崎でだった。美しく、やさしかった。 その連れ…

崑崙草(コンロンソウ)

路木ダムの建設現場見学会が7月30日にありました。 参加者は、主に熊本市内からの10名でした。 先月には土台しかなかったコンクリートプラントが異様な姿を現しています。 山肌はいよいよ削られ、重機が通る道もつくられています。 暗澹とした気持で振り返る…

誰もいない海水浴場

八月初めの風もなく波も穏やかな午前10時ころの海水浴場です。 だれもいません。 市内中心部から、車で15分ほどのところです。 ぼくは、流木を探しに来たのですが、流木はあちこちで集められ、燃やされていました。 立派なシャワー室もトイレもあります。蛇…

流木生活 アトリエ クロ

流木は曲がっている。まっすぐなものはほとんどない。海を漂い、風になぶられ、海岸の岩にぶつかって裂け、割れて傷つき、いま、ここにある。 ひねくれものは、ひねくれもののままでいい。 今日、自分のための看板を作った。

虫追い祭り〜忘れられた記憶

7月17日は、天草市河浦町で『虫追い祭り』があった。天草に来て20年になるが、はじめて見に行った。 一度は見てみたいと思っていた。たまたま今年、インターネットテレビの天草テレビが『虫追い祭り』の番組を作った。そのナレーションを依頼されたのが、…

天草環境会議を終えて

沈殿するもの それは海辺に立って遠くの島と さらに遠くの雲と 雲を染めて沈む夕日と あなたをつつみ あなたをうながし とおい世界へあなたを誘う風よりも 少しだけ重い この光景の前に すっかり透明になったあなたの心に ゆらゆらと沈み あなたの歩みをたす…

第28回 天草環境会議 ~子どもたちにつなぐ天草の海山~

地球がくるくると太陽の周りを回って、まもなく一周しそうです。 天草環境会議は、28周目を迎えようとしています。 哲ちゃんから昨日チラシが届きました。 東北大震災と原発事故が大半を占めそうです。 チラシにはありませんが、代表は「水俣学」の原田正純…

引き出し型とひっかけ型

整理の仕方にはいろいろある。 私は徹底して「ひっかけ型」だ。床に置いてしまえばいいのだが、そうすると足の踏み場がなくなる。壁に画鋲でとめていたらまたたく間に壁は一杯になった。そこで、海に行っては流木を拾ってきてひっかけられるものを作っている。…

カナリヤの子どもたち

カナリヤという小鳥をご存知ですか。 そう、あの黄色い色をした小さな鳥です。 昔、といってもそれほど遠い昔ではありません。石炭を掘る炭鉱夫たちは、坑道の奥に行くのにかごに入れたカナリヤを持って行きました。 なぜ? そこに酸素があるかどうか、カナ…

雨ときどき放射能

雨の日曜日です 大量の放射能が東風にのって内陸部へと運ばれます 原発から南西の地域にお住まいの方 窓は開けないでください 雨には濡れないでください 暑くても長袖とマスクを着用してください 帽子もおすすめです それから新しいライフスタイルの提案です…

詩人よ

この世界の どこにも属さず ついに 何ものにもならなかった詩人よ 頑なに意思を貫いた詩人よ あなたがあなたの一生を通して 証明したかったものが なんであったのか 西の山にしずんでいく星の明かりのようにも かすかに 分かる気がする 言葉は無力だ あなた…

「壊れ物としての人間」

3月11日の東日本大震災の後、ずっと以前に読んだ大江健三郎のエッセイを思い出していました。彼はそのエッセイの中で、人間にはfragile(=壊れ物)という札が貼ってあるのだといいます。限りなくあやうく、もろいものとしての人間の存在。 天草では年に…

安定供給

だいぶ前のことだが、知り合いに「一夜干し」で商いをする男がいた。 アジの一夜干しやイカの一夜干しを売るのだが、ここ天草産の物はほとんどなかった。 その理由について、彼はこう言うのだった。 「いいかい。お客さんは、このあいだ買ったアジの干物はう…

若葉を食べる

「クサギナ」という木の葉がある。臭い木の葉だ。漢字で書くと「臭木葉」と表記されるのかもしれない。 子どもの頃、潮が引いた砂浜でヤドカリを集めた。ヤドカリは魚釣りの餌にする。集めたヤドカリを水たまりに入れる。そして、石でつぶしたクサギナの葉を…

海と人間

久しぶりに海へ行った。半年ぶりになるのかもしれない。 去年の12月から、海へと足が向かなかった。3月11日を予感したわけではないが、海との間に「会話」が成り立たなくなったことは事実だ。 海との会話とは何か。知り合いの漁師は、「海は裏切らない…

さくら くらさ 【再掲】

むかし むかしも 交通事故はあった 馬に蹴飛ばされ 馬車にはねられて死んだ人は 結構いたのだ 車の登場は しかし 事故の確率をいっきに上げた あっちでぶつかり こっちでつぶれ それにひきかえ 飛行機は安全です 比べてごらんなさい 自動車事故の何百分の一 …