2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

宇井純という人。

宇井純は杖をついた小柄なおじいさん 「いやあ、満身創痍ですよ」 にっこり笑って 杖を握りなおす OHPの透明フィルムにマジックで曲線を描く そして 水平線を一本 交わるところに 水鳥 曲線の高いところに 木 かいがいしくOHPを操作しているのは 大阪大学大…

誕生日前日。

誕生日前日 島の向うに夕日が沈み そのまた向うの海に夕日が沈み 海は北西の風に波立ち 太陽への道も途切れ途切れで 沈むまでにはたどりつけそうもない 島の向うに夕日が沈み そのまた向うの海に夕日が沈み いくつもの周回軌道は交錯し わたしは誕生以前の記…

鶴岡のばあさん 3

見えないものを作るいつもいっしょにいるのに 見えないものって なーんだ鶴岡のばあさんは今日も元気でした若い友人が一晩のライブ公演をつくろうと苦労しています。 フラメンコライブです。ギターリストと踊り手は福岡から来ます。カンテと呼ばれる歌い手は…

鶴岡のばあさん 2

今日、鶴岡のばあさんはよくしゃべった。 よう来た、まあ、はいれ。 わしな、昨日で満の90歳になった。それで思ったんだが、渡り鳥にすれば、もう、90回も海の上を飛んで行ったり来たりしたわけだ。 なんの、ツバメを考えてみい。タマゴから孵って、その…

鶴岡のばあさん。

鶴岡のばあさん 鶴岡のばあさんは一人暮らしだ。 山の上の家に一人ですんでいる。 「寂しかないか、だって。ぜーん、ぜん」 ほれ、デコポンが色づいてきたろうが。このデコポン、一個200円で売れる。 一本の木で100は実をつける。そ、2万円じゃ。その…

笑う女。

いつもの海に見かけない女性が座って釣りをしていました。 「アハ、アハハハ。ウキが沈んだ」 大柄だけど、動作はスムーズです。 「引いてる、引いてる。アハハハ」 座ったまま、フンとばかりに魚を抜きあげます。まさに、ごぼう抜き。 「アハ、ボラだ。猫じ…

羅生門・下人

下人の若者は、死人の髪を抜く老婆に激しい怒りを感じますが、 「飢え死にしないためにはしかたがないのだ。疫病で死んだこの女にしたって、さんざ、悪いことをしてきたんだ」若者は、考え、迷い、悩みますが、老婆の着物を奪って闇に消えます。http://www.a…

おやすみなさい

おやすみなさいお日さまはとうに沈みましたよ おはなしも いっぱいしました じゃがいもの皮をむきながら たまねぎをきざみながら それから みんなそろっての 夕食のときにも 海が入り江にあふれるように いっぱい いっぱい あなたが今日出会った たのしかっ…

龍が空をとぶわけ

龍が空を飛ぶわけ 浜辺に座って、爺さんが焼酎を飲んでいる。目は濁ってとろんとしていて、顔は酒焼けでてらてらと光っている。その爺さんが、龍が飛ぶことについて話をした。 梅雨の晴れ間の夕方で、空には不安定な夏の雲がひしめいている。 若いの、まあ、…