引き出し型とひっかけ型

整理の仕方にはいろいろある。
私は徹底して「ひっかけ型」だ。床に置いてしまえばいいのだが、そうすると足の踏み場がなくなる。壁に画鋲でとめていたらまたたく間に壁は一杯になった。そこで、海に行っては流木を拾ってきてひっかけられるものを作っている。
思えばこれまでにいろんな「ひっかける」ものを作った。グミの木の枝を使った小物掛けに始まって、竹の小物かけや流木のキーホルダーかけ。先日できたのはやはり流木の腰バッグかけだ。まな板かけも作った。
なぜかひっかけることに惹かれるのだ。
眠れない夜に、どうしてか、と考えた。
こんな結論に達した。


身の回りの物を手際よく整理したい。それも、見えるかたちで。
整理で代表的なのは、引き出し型だろう。目の前からこまごました物が消えることで、片付いた、と思うタイプだ。このタイプの特徴は、あとで必ず探し物をする。あれは、どこへしまったんだっけ。うちのカミさんがそうだ。


近くに、以前に大学院で物理を教えていたU氏が住んでいる。徹底的な引き出し型だ。彼はあらゆるものを分類し、ファイルし、引き出しにしまう。
物置を改造した彼の作業場に行って驚いた。壊れたテレビやラジオ、その他彼の目の前に現れたおそらく一切のものから分解して取り出したネジが、インチとミリ、径と長さに分けられていくつもの透明の引き出しにあった。
チェンソーのカバーをとめるネジがなくなって彼を訪ねたことがあった。
「これでいいんとちゃうか」
いくつもの引き出しから即座にぴったりのネジを持ってきた。
しかし、と思う。ひっかけ型はちがう。しまい込むのではなく、見えるかたちで整理したいのだ。たぶん、面倒くさがり屋なのだ。夜にはまた寝るのにどうして毎朝蒲団をたたむ必要があるのだ、と思うタイプだ。いい加減で、大雑把だ。


そのU氏が前々から言っていたことがある。
大学の同輩で、卒業後、原子炉の設計をしている奴がいる。
「あんな雑駁な人間がつくる原子炉なんて、信用できへん」
多分、私と同類だったのだろう。


その通りになった。