若葉を食べる

クサギナ」という木の葉がある。臭い木の葉だ。漢字で書くと「臭木葉」と表記されるのかもしれない。
子どもの頃、潮が引いた砂浜でヤドカリを集めた。ヤドカリは魚釣りの餌にする。集めたヤドカリを水たまりに入れる。そして、石でつぶしたクサギナの葉を入れてかき混ぜる。すると、ヤドカリは我先にと巻貝の殻から出てくる。
とにかく、強烈に臭い。苦味もある。この若葉を食べる。
お茶の葉を摘む要領で若葉を集める。これをたっぷりのお湯でゆでる。次に水にさらす。水を絞り、細かく刻む。こうして初めて調理が始まる。
地域によって料理の仕方がちがうこともある。一つは、しょうゆで辛く煮詰めて佃煮風にするやり方。
もう一つは、炒め煮にする。
この時季、グリーンピースが出回る。さっとゆでたグリーンピースと炒め合わせる。ときには水切りした豆腐をくずして入れることもある。ぼくが親しんだのはこっちの方だ。
若葉の季節のこの時だけしか食べることができない。このクサギナを食べることで、季節を体の深いところで感じる。


福島を思いつつ、今日、食べた。