再会

20年振りの友人がやってきた。正確には23年振りかもしれない。
彼女は我が家に2泊して、夫と二人の子どもが待つ埼玉へ帰った。


不登校・登校拒否」の全国連絡会議が、今年は長崎県佐世保であった。それが終わって、彼女は長崎経由で天草へ来たのだった。
富岡港まで迎えに行った。フェリーの上から笑う彼女は、20年前とちっとも変らない。
「二人ともちっとも変わらないのね」と彼女が言う。
「あなたこそちっとも変っていない」
これが再会のあいさつだ。
彼女は、埼玉の秩父に住んでいる。
「船に乗ってどこかへ行くのなんて初めて」と言って笑った。


お互いに伝えたい事がいっぱいあった。
彼女は埼玉で高校の教師だった。でも、4年で辞めた。辞めて、念願だった編み物を始めた。
そして、結婚し、二人の子の母になった。
長男が小学3年生から不登校になった。
「親の会」を秩父でつくり、埼玉連絡会に参加した。


「全国連絡会」は、毎年、8月最後の土日に、全国持ち回りで大会を開く。去年は、岩手だった。参加者の中で、津波で亡くなった親子がいた。避難警告のサイレンが鳴るなか、子どもが、どうしても家から出られなかった。母と子が、津波にのまれた。
「悲しいよね」彼女は涙ぐんだ。


悲しみは、秩父の里にも天草にも降りそそぐ。


「わたしの生き方はこれでよかったのよね」
多分、そう彼女は言いたかったのだと思う。
「また、ふらっと来るかも」
そう言って、電車に乗った。