いのち

8月になると、命について思う。


今、死にそうな叔母がいる。94歳だ。
彼女の夫は沖縄戦で戦死した。遺骨もなにも、ない。


三人の娘がいたが、長女は60歳を待たずに死んだ。天草から見れば異郷の地である尼崎でだった。美しく、やさしかった。
その連れ合いも、定年を目前にしたお盆の帰省中に急死した。クモ膜下出血だった。


次女は、漱石がいう「智に働けば角が立つ」タイプだ。何でも自分中心で、人とのコミュニケーションがへたくそだ。東京で結婚して、今も東京に住んでいるが、母親の面倒を見に半年以上は天草にいる。


三女は40歳になって結婚した。その夫が、一年前に亡くなった。
困ったことに、「私はだれ?ここはどこ?」の世界にいる。


写真は沖縄で戦死した叔母の夫だ。この夏にも叔母の命は尽きるだろう。


ながいながいあいだ一人ぼっちだった叔母が、やっと70年前に帰れる。