2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『水道局』

こんばんわ。さあ、今日は水道の話でっせ。水は人間にとって大事なもんです。人間、水と空気がなかったら生きていけません。その大事な水を取り扱っているのが水道局や。ところがな、この水道局の職員ときたら、公務員根性、丸だしや。 なんか、気合入ってる…

花街(はなまち)

その昔、ここは飲み屋街だった。通り全体に飲み屋とラーメン屋が軒を並べていた。 その中に今、ぼくらは住んでいる。ぼくらが住んでいるところも、かっては割烹旅館だった。「洛水」といったらしい。 ここ花街の中心は、「天劇」という映画館だった。 ぼくが…

チビスケチビスケ2

まったくチビスケは変わったネコだ。流れる水が好きなのは(1)に書いたが、最近、遊びがエスカレートしている。おれの腕にしがみついて、袖口にかみつく。おかげでおれの手の甲は、傷が絶えない。 食べ物がまた、変わっている。魚が好きではないようなのだ…

夫婦漫才

「危機管理」 「こんばんは。今日は、あけぼの老人ホームでの公演です。さすがに、お年寄りさんが沢山でございます。あらためまして、こんばんは」 「当たり前やろ。ここは老人ホームや。なに考えて挨拶しとるんや」 「そんなにがなるな。おれ、最近難聴と思…

ある死

フガは1939年に生まれた。 家は酒屋をやっていたときいた。しかし、フガのじいさんは酒を売るよりも自分で飲んでしまう方が多かった。じいさんが囲炉裏に座って酒を飲んでいる光景しかフガには記憶がない。うまそうに酒を飲んでいるじいさんを見ていた。…

カフェ・オ・ラ・オ・リ

昔むかし、フランス語の先生が語ってくれたことがあった。 「フランス人は、朝、ベッドでコーヒーを飲むのだ。朝起きたらまず、台所に立つ。寝巻のままだ。そこでコーヒーを沸かす。片方で牛乳を沸かす。沸いたら、こう目の高さに両方を持つ。右手にコーヒー…

久米島6(最終回)

相変わらず、小雨が降り続いている。久米島の武蔵に別れを告げた。 「どうも、どうも、お世話になりました。機会があったらまた、来たいと思います」 「はい。お待ちしております」 空港では息子が待っていた。サブ講師の女性も一緒だ。 「お荷物になります…

久米島5

アーラ浜 ―死者が行きつくところー ここの光景が最も強烈だった 生の気配がなんにもないのだ 生きて動いているものがなにもない 渚といい 砂浜といい じっと目を凝らせば 動くものはあるはずだ そう信じて目を凝らした しかし なにもいない 累々とした珊瑚の…

久米島4

翌日、やはり雨だ。強くはないがぽつぽつと降り続けている。テレビの天気予報でも一日雨の予報だ。 8時。ドアをコツコツたたく音がする。息子だ。かれは今日、仕事の日だった。今日はおれたちを案内するために代わってもらった。彼はまた、12月におれたち…