2009-01-01から1年間の記事一覧

クリスマスの夜に

あなたはゆらゆらゆれながら そこに立っているだけでいい 100年に一度 天女が水浴びに来る そして 羽衣をあなたにかける あなたはそこにそうして 立っているだけでいい ゆらゆらゆれながら でも 倒れないで 立っているだけでいい 恥ずかしげな人ほど 早く…

クロクロ クロスケ

海には風が 遠く吹いて きらきら お日さま 沈みます クロクロクロスケ たのしいね お空に星が ひとつ ふたつ やさしい母さん 思い出す クロクロクロスケ さびしいね 涙の後の 父さんの匂い ゆらゆら海も輝いて クロクロクロスケ なつかしい 家には明かり 走…

休日の海

わあ お父さん 青い魚がいるよ きれいだな なんて名前だろ? それは たぶん ブルーフィッシュだよ わあ お父さん こんどは赤い魚だよ なんて名前だろ? レッドフィッシュだよ たぶん わあ お父さん 黄色に黒のしましまの魚がいるよ なんて名前だろ? タイガ…

オムライスまたはLOVE  YOU

今日の昼はオムライスにしよう フラボーがいった 昨日のご飯がちょうどよい具合に残っているし 卵が余り気味だ 具材は? フォンが聞く 玉ねぎとウィンナー ピーマンも入れるか それとバターだ ふむふむ フォンは頭の中で手順を追う 仕上げはおれに任せてくれ…

時計の引っ越し

オイオイオイ アイアイアイ 時計はどこへ 時計は新しい彼女の部屋へ B子さんのためのネズミ入らず いつかは終わるもね 明けない夜がないように かなしみはやがてとける 時計は時を刻む アレ アレ アレ 明けない夜はない 暮れない昼もない いつかは終わるもね…

秋色のバッタ

思わぬ時期に台風襲来とは、東海から関東にかけて生息する わが同胞バッタにお悔やみ申し上げる。 ところで、先日の報道にわしの触角がふるえた。 熊本市では、ゴミ置き場からの空き缶の持ち出しを禁止する条例が10月から施行されたというのだ。 理由は、…

実りの秋。

コスモスとかまきり

雨が降りそうだな、とかまきりがいいました。あら、そうかしら、とコスモスがいいます。だってさ、空は曇ってきたし、おいらの羽をなでていく風も湿っとしていてさ、今にもポツンと落ちてきそうじゃないか。でも、かまきりさん。風が吹いてくる方向を見てご…

二人で歩く

二人で歩く町は残暑の白い光 間もなく十月というのに 三十度を超える いろんな九月が過ぎた そして三六度目の九月が終わろうとする 大型電気店は白い光にあふれ 二人は雲の上を歩いているよう レーゾーコをください 入れ歯の男が言う は?冷蔵庫ですか? そ…

いいわけ

落ちそうで落ちず よたよたと飛び 見上げる月の世界ははるかに遠く 一度も浮上せず 今日まできた 言い訳を言おう 浮上することは押しのけることだ 浮力は押しのけた体積に比例する あなたたちは 浮上し続けるために 常に自身を拡張する さらに言おう 揚力は…

『買った方が安い』

こんばんは。 今夜は釣りの話ですねん。 いいですね、フィッシングですか。 お前と話すと、なんか、話がずれるな。なんや、そのフィッシングって。 フィッシングイコール釣りです。それが何か? あのなあ、キャッチアンドリリース、湖でブラックバス釣るのと…

生死課

田舎の現実

近所に「こまんかおじさん」という人がいる。左官屋さんだ。 「こまんか」というのは、小さいの意。初めてあったとき、自分からそういって自己紹介した。 不景気の波がじわじわ押し寄せてきて、もう何年も本業である左官の仕事がない。去年の今頃、彼は九州…

ナシトゲ神社

こう暑い日が続いちゃかなわん。 子どもたち、こっちへ寄れ。この銀杏の木の下だ。 どうだ、日蔭は涼しいだろう。 夏休みの宿題は終わったか。ナシトゲ神社の梨は食ったか。 そうか、そうか。 それじゃ、今日は、そのナシトゲ神社の話をしよう。 むかし、む…

二十五夜の月

もうまもなく東の空が白々とするころ 二十五夜の月は ようやく中天にさしかかりました まわりには たくさんの星も輝いています 満月が 夜空のすみずみにまで 光の兵士をおくり 夜の世界をすっかり平定するのに対し 二十五夜の月は たくさんの星たちといっし…

干しダコは嗤う

暑い、もう、無茶苦茶だ。 朝7時、日の出と同時に婆さんが俺を吊るした竿を持って、国道を渡る。車の排気ガスを避けて、潮風の中で俺を干そうというのだ。 そうだ、俺は干される。太陽は、容赦なく俺の手足の先まで焦がす。 昨日まで、この先の海岸で海水浴…

路木ダム。

まったく、恥ずかしくって夜も眠れない。 おれは、とうとう、食えなくなった。 家賃を払えば、米が買えない。 電気代を払えば、ガス代が払えない。 職を探しても、中高年の身、おいそれとあるはずもない。 いいや、おればかりじゃない。あっちにも、こっちに…

竜宮の話

二人の男が防波堤でしゃべっています。 夏の、日陰も何もない防波堤の上は、灼熱の地獄のような暑さです。 一人の男がいっしょうけんめいに説明しているようです。「・・・あのなあ、入り江全体が桜色や。夕日にはまだ早い。不思議なこともあるもんや、と思…

命の歌

ね 白い砂の上 あたしは根付いた 砂の中に あたしは根を張る もっと深く もっと広く あたしは受け継いだ 塩から細胞を守るすべを 地上にとって辺境の砂浜は あたしにとっては楽園 暑い日差しは かあさんの匂い ね あたしは根付いた 小さいけれど あたしは強…

暑い夜に。

夜の12時を過ぎても、室温は30℃ある。 旧式の扇風機は、ゼロ戦のプロペラみたいにぶんぶんと夢をはぎとり、南の空には16夜の月が、やはり汗をしぼっている。今夜あたり、アカテガニの行進があるはずです。 アカテガニは、夏の満月の前後の夜に海を目指…

天草環境会議

天草環境会議のご案内まもなく暑い夏がやってきます。 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。天草環境会議も今年で26回目を迎えます。この間、全国で多くの人たちが支え、協力してくれました。そこから人と人とのネットワークが生まれ、広がっていきました。…

オコゼとミノカサゴ

散歩

私は川のほとり 若葉の中に光はあふれ おい蟻さん じゃまだよ つぶされちまっても知らんよ 私は川のほとり 若葉は風をはらみ おい象さん じゃまだよ 肉屋に売られても知らんよ 私は川のほとり 若葉が急いでささやく 蟻はあなた 象はあなた 川面で光は舞い 風…

美についてのハエの抗弁

ステンドガラスに一匹のハエがいて 嗤っている こんなものが 美しいだって ばかばかしい 美しいものは何だ 美は 生(せい)だ 生きてあるから 美しいのだ このことは 宇宙はリズムだ とおなじく 真理だ 野の花が美しいのは 生きているからだ 明日にはもうない …

アサリが世界をつなぐわけ

「寛容」ということを思っていました。「寛容は、非寛容に対してもなお寛容たりえるか」と戦後の日本で発言したのは、フランス文学者の渡辺一夫でした。 それからまた月日が経って、地上は非寛容の嵐が吹き荒れています。3,4年前にアサリの生息調査に加わ…

名前が分らない花

毎年この季節に、山で可憐な花を見つけます。 リンドウとばかり思っていましたが、違うようです。 第一、リンドウの花の時季は秋でした。 八代で見つかった八代草とも違います。 薬草のセンブリにも似ていますが、やはり違います。 竹の林の中に、小さな紫の…

異邦人

心ある人よ 聞いてほしい 村は 異邦人をおそれ うやまい そして 排除する 異能の者よ 異形の者たちよ そなたの安住の地はどこにあるのか 月は細り また太り 天女の羽衣は幾重にも積み重なり 時は流れるのではなく 心ある人よ 聞いてほしい 村は 異邦人を愛し…

守ろうとする意思

思い出してごらん 子どものころ 海はどんなだったか 川とどんなふうに 遊んだか わたしは海に生まれ 川で育った 海の深みの色は恐ろしい青で 川の向こう側には 河童が座っていた 私の遠い記憶には 私の父と母がいて その父と母の記憶には また 父と母がいて …

海は荒海…。

たとえば 小さな島の 小さな海岸 奇蹟的に 唯一 残された 砂浜 朽ちた船の残骸が砂に埋まり 夥しい流木 カツオドリの死骸 だから? ここを人工海岸にするのだという コンクリートで固めた緩傾斜の護岸に 深い海底から採ってきた砂を積み上げ 夏の一時期 都会…

変化する点描画

一枚の肖像画がかかっています その肖像画は、細かな点描からなっていて もうずっと見慣れたものなのです 家族はこの肖像画の下で暮らしてきました 赤ちゃんが生まれて 暑い夏が来て、雲が風に飛ばされ 金木犀が何回も香り 母親が大きな手術をし 渚にあふれ…