海は荒海…。

たとえば 小さな島の 小さな海岸
奇蹟的に 唯一 残された 砂浜
朽ちた船の残骸が砂に埋まり
夥しい流木
カツオドリの死骸


だから?
ここを人工海岸にするのだという
コンクリートで固めた緩傾斜の護岸に


深い海底から採ってきた砂を積み上げ
夏の一時期
都会から海水浴客を呼ぼうと
それが 地元の意向でもあると


樋島 外平海岸は 北に開き
姫戸を望む
ここに砂浜が出来たのは
何万年と続いた海流
雨が溶かし出した山からの黄色い砂


それをたった三年で人工海岸にしようというのか
ミドリシャミセンガイが命をつないできたところ
夜な夜なウミサボテンが愛をかたるところ


遠くなつかしい記憶が
あなたの遺伝子の片隅にもあるはずだ
机の上の 図面引き屋さん
蛍光灯の下の 計画推進者さん


ニンジンイソギンチャクが
小さな泡を浮かべる
幽かなささやき


このようにしてわたしたちは生き
このように死んできた、と
幾万年も
なにも語らず
なにも望まずに