2009-01-01から1年間の記事一覧

温泉。

不機嫌な夜

右へ曲がって 左へまっすぐ 見上げると 南の空に さそり座 元に戻って 左の突き当たり 見上げると やっぱり さそり座 いくつも角を曲がり クルクル 走り回り 見上げる 南の空には さそり座 地上が闇に覆われていたころ 人がいわしや鯨の油を燃やしていたころ…

スージーヌ。

捨てられた靴

どうして靴を捨てるのだろう。 捨てられた靴がどうしてこうもたくさん砂浜に流れ着くのだろう。 夏の靴を捨てたのか。 夢中で泳いでいる間に潮が満ちて流されたのか。 それとも、 こんなにたくさんの人が身投げしたのか。

いみる

「いみる」は、満ちることです。 たとえば、父親が子どもに昔話を語っています。 ひとつの話が終わると子どもは「もっと」とせがみます。 父親は次の話を始めます。それが終わると子どもはまた、 「もっと」とせがみます。脇で聞いていたおばあさんが、 こう…

海を渡る。

すべて、赦される

夕方、海沿いの道を走っていて出会った光景です。 ボーッと見ていたらタイトルの「すべて、赦される」という言葉が浮かんだのでした。 地球は変わらずカラカラと ブリキのおもちゃのように 回転し わたしたちは そこで生き 死ぬのに わたしは ヒトの側に立つ…

砂糖湯

「砂糖湯を飲もうか」 夕食のあとで すっかり 赤い顔をした父親が言う なんのことはない 妹や弟の湯飲み茶碗に スプーン一杯の砂糖を入れ お湯を注ぐ子どもたちは 父親のまわりに輪になって 熱くて 少し甘い砂糖湯をすする父親はなんだか上機嫌だ 「おい、母…

しわぶる。

昼間、今年は米を作りたいという若い友人を呼び止めて、米作りのベテランから話を聞いていました。 「荒おこしから始まって、水を入れてしろかき、3月の半ばになれば苗の準備もせなならん。そして、4月に田植えだ。今年は4月10日ごろになるかな」 一連…

梅の花。

開き始めた梅の花にメジロがきて、花にくちばしを突っ込んでは蜜を吸っています。 「梅の花が咲くころが一番寒いものだよ」「やっぱり、桃の花が咲かないと春は来ないねえ」 「思ってごらん。去年梅の花を見て、今年はもう、見ることができない人のことを」 …

タコ漁師の木下くん

タコ漁師の木下くんは、タコが大好きなのだ。 タコは1月の寒い海で生まれるとよ そいで、波の合間をひらひら泳いどらすと タコ、タコ、気をつけろ イソギンチャクの触手はメドゥーサの髪、 フグの前歯はギロチンの刃 アマモの森から離れるな で、当の木下く…

お正月。

新年明けましておめでとうございます どちらさまもおめでとうございます いい正月でございます 雪が降っております 少々寒うございます ふところはもっと寒うございます ええ、明けましておめでとうございますおい、おい、だんだん沈んでくるやないか ちっと…