2012-01-01から1年間の記事一覧

      トントン・パテルのお話し

(6) 「この水は、チチハリヤマの雪が溶けて湧き出たものだよ」 タットばあさんは言いました。 「その証拠に、見てごらん。常に湧きだしているだろう」 レミィは自分のコップを出すと、さっとすくって飲んでしまいました。 「じゃ、わたしも」 母さんのメ…

    トントン・パテルのお話し

(5) タラチネヤマを下りるのに丸一日かかりました。 不思議なことに、村を出てからこれまでに生き物の気配を感じたことは一度もありません。鳥の鳴き声さえ、聞かなかったのです。それが、タラチネヤマを下りる途中、空の高いところを白いネコカラスが飛…

トントン・パテルのお話し

(4)「おう、これはひどいね」 タットばあさんは、ブドンの足を見て言いました。そして、乾燥したヨモギの葉を出して、少しの水で湿らせてからブドンの足に当て、包帯で巻きました。 「まて、まて。これじゃ、靴がはけん」 タットばあさんは、ブドンの靴を…

花と雲と流木の展示会終了

展示会が終わりました。 去年と同じように、晴天。 にも関わらず、ヒマ。 野の花と雲の写真を撮っていました。 荷物を車に積み、コーヒーをごちそうになって、窯元をでると夕焼け。 トントン・パテルは今日はここまで。 トントン・パテルのお話し 3 パテル…

展示会二日目

展示会、二日目が終わりました。 ウィークデイということもあってか、お客さんもボチ、ボチです。 明日からの三連休を期待しましょ。 トントン・パテルのお話し (2) ダーバは村の人たちを集めました。村に重大な危機が迫っていることは明らかでした。 ダ…

今日から展示会

丘の上の窯元の庭先で展示会です。 去年も期間中、晴天でした。 どうやら今年もいい天気の様子です。昨日行ったら、窯元はまだ窯入れの最中です。 「長年やってて、窯出しが間に合わないなんて初めて」 そう言いながら、窯の中に隙間なく詰めていきます。 「…

トントン・パテルのお話し

(1) ある日のことです。 トントン・パテルの住む村に大きな地震が起こりました。 パテルは、父さんと母さん、妹と一緒に、ちょうどお昼のご飯を食べていました。最初、お膳の上の茶碗がカタカタと音をたてました。パテルがおやおやと思っていると、ドンと…

月例朗読会

昨年の12月から始めた、毎月最終日曜日の朗読会がさっき終わった。 居酒屋レストラン『ばってん』での、ワンコイン朗読ライブ。 今日は、太宰治の『女生徒』から「おさん」の朗読。『方丈記』から始めた朗読会が、そろそろ1年になる。 もともと、2011年3月の…

ザルネコ

このあいだから少し暖かい日が続いた。ニイちゃんがいつもの寝場所にいない。振り返ると、台所のテーブルの上にいた。ザルに入って。 だいたいはぼくが作業しているわきで、木の箱に入っている。 このニイちゃん、どこかとぼけた顔をしている。手足が長い。…

じゃんけん市長

「じゃんけんって、やったことあるだろう。 いつの間にか、「最初はグー、じゃんけんぽん」が普通になった。 しかし、もともとはちがった。 「ぱっと開いて、じゃんけんぽい」。 これが正統。 しかし、これにもそれ以前があった。 「ハサミではさんで、じゃ…

どこから来たのか

どこから なんのために こんなにも生きづらい世に きみはやってきたのか 町を歩くきみの姿はさみしく いつもかなしい その姿はすべてを失って 漂浪する 空腹の子犬に似ている きみよ だが 今日があったように明日はない 世の多くの人が 今日があったように明…

竹灯り幻想2

赤い色はやさしい 赤い色はあたたかい 炎の色 熱せられた鉄の色 赤い色は強い 一切を圧倒して 強い 太陽のように強い

来年の夏のための準備会

来年の夏、天草環境会議は30年をむかえる。そのための第一回目の準備会が、今夜、苓北町であった。2日間にわたる会議の中身を詰めていくこと。30年の運動を記念誌としてまとめること。殊に記念誌については、月一のペースでテーマごとに進めること。A4…

竹灯り幻想

雨が降らなかったので、先週に続いての山行き。 竹との格闘。それにしても、きりがない。7月に行ったきりの「畑」は、かくのごとし。 かって、ここが畑であった証しはどこにもない。足もとを見ると、小さな青い花びらが無数に落ちている。葛(クズ)の花び…

ゴミが好き?

ニイちゃんはゴミが好きだ。 庭で作業していると必ずやってくる。そして、ゴミの中を転げまわる。カンナくずを爪に引っ掛けて口に入れる。 「ペッ、まずい。もっと、うまい物作りなよ。かつお節とかさ」 ノコギリにちょっかいを出す。往ったり来たりするノコ…

漫才『ナンバ式』

同級生の二人は、高校卒業後、関西と関東にわかれました。そして、月日は流れて、めでたく定年退職。退職後に故郷で再び出会います。漫才コンビ『オジサンコミック』の誕生です。 「ロンドンオリンピックが終わりました。選手・役員のみなさん、お疲れさまで…

ハチノス

ハチノスは、蜂の巣だ。このあたり一帯を指す。かっては段々畑だったところだが、今は写真の現状だ。月に一度くらいのペースでぼくは山に入り、竹を切る。今はまだ見えない将来のために。 ハチノスは、蜂の巣がたくさんあったからではなく、山全体が蜂の巣の…

月の夜の会議

「満月を見れるのは、30日に一度だ。ざっと数えて一年に12回。10年で120回、100年で1200回ということになる。今夜は、それぞれが見た満月の回数から発表してもらおうか」 「いちいち覚えちゃいないよ」 「おれもさ。1000回くらいまではなんとか数えたがね。…

ニイちゃん車を出る

[日記] ニイちゃん車を出る 猫は、いや、人間もかもしれない、ある時、突然、変わる。 車猫のニイちゃんに、2,3日前に車で餌をやった。いつもならそのまま餌を食べているのだが、帰ろうとするおれの後に付いてくる。ここはおまえのいる場所じゃない。家には…

未新子(ミジンコ)

未新子=ミジンコは、今年一年生になったばかりの、おれ、キョンキョンの妹の名前だ。名前をつけたのはもちろん、じいちゃんだ。生まれた時、ひときわ小さかったらしい。それで、未新子。相当飛躍していると思うけど。 おれとおなじで、だれも未新子(ミジン…

涙のかたちのティースプーン

朝のコーヒーに 砂糖とミルクを入れる 今日も暑く 今日の朝までに流されたたくさんの涙のひとつで あなたはカップのコーヒーをまぜる これはそのためのスプーン 涙のかたちのティースプーン

オジサンの逆襲

夏の雲がゆっくり流れる 上空一万メールにまで達した雲が 見えない速度で移動する 海を隔てて 山の向こうで 激しい上昇気流 オジサンはずっと思っていたのだ いつか いつか逆襲に転じようと ずっと押されっ放しだった 海の青さも空の青さも 深いところで理解…

ニイちゃんの夏

車ネコのニイちゃんが、外に出た。 初めて見る海。初めての大きな空と白い雲。風は磯の香りで。 この日、往復1時間半のドライブ。帰りに寄った日陰の公園。 疲れたニイちゃんは、ぼくの肩に顔をのせておやすみ。

いい風

カミさんと二人で、カミさんが土産に持っていった塩の代金を払いに、塩屋のメグミちゃんを訪ねた。メグミちゃんは、マッちゃんと二人で海水から自然塩をつくっている。 「家の前の道は工事中だから車は下に置いてきてね」 メグミちゃんのいる塩屋の家は、大…

[日記]