ザルネコ


このあいだから少し暖かい日が続いた。ニイちゃんがいつもの寝場所にいない。振り返ると、台所のテーブルの上にいた。ザルに入って。
だいたいはぼくが作業しているわきで、木の箱に入っている。
このニイちゃん、どこかとぼけた顔をしている。手足が長い。しぐさがおかしくて、笑ってしまう。
「名前、変えようか」
家でひそかにささやかれている。
「与作はどうかね」
いくらなんでも与作はかわいそうだ、と渋っていた息子クンも、最近では「おい、与作」などと言っている。
車から台所まで来たのはいつだったか。今では台所がニイちゃんの場所になっている。・・・と書いていたら、別の方角からニイちゃんが入ってきた。台所の扉はしまっている。さては、いったん表に出てからブロック塀の隙間をくぐってきたか。
大きくなった。夏の暑さが一段落したころから、よく食べるようになった。そして、よく寝る。寒い冬の準備をしているのだろうか。
それにしても、台所がにぎやかになった。テーブルの上から流しへと自在に飛び移る。ゴキブリを見つけては追いかける。昨夜は食器カゴを落として、とうとう大事な皿を割ってしまった。
「おれ、知らんからね」
そういっているのだ、たぶん。