来年の夏のための準備会


 来年の夏、天草環境会議は30年をむかえる。そのための第一回目の準備会が、今夜、苓北町であった。2日間にわたる会議の中身を詰めていくこと。30年の運動を記念誌としてまとめること。殊に記念誌については、月一のペースでテーマごとに進めること。A4サイズで、本文500ページ、資料編100ページ程度の分量となるだろうこと。定価は3000円くらいになるのではないか。
などという準備会は、ものの30分で終わった。外にはゴザが敷かれ、テーブルが置かれて、宴会の準備。サバとカワハギの刺身にすり身の揚げ物、アスパラのてんぷら。
ビールの栓は抜かれ。わけが分からぬうちに乾杯。完璧、苓北流。
その宴会の中で面白かったのは、漁師のタジマさんの話。
「今、オーストラリアでヒトデとワカメが大繁殖しとるじょん。なぁに、原発が止まっているせいで苓北火電はフル稼働しとる。石炭を積んだ船が毎週港に入っと。石炭を陸揚げした後、空荷で帰る。ところがそのまんまじゃ、スクリューの半分は水面からあがっとる。そこで港で海水を入れる。ほんとは公海に出てから海水を入れことになってるが、だぁれも守りゃしない。それで、苓北の海水がそのままオーストラリアに運ばれる。海水の中には、ちっちゃなプランクトンや卵やワカメの胞子が混じっている。こがんして(こうして)、苓北の海水がオーストラリアの港で放出されるとぞ」
「そういやぁ、和歌山でムール貝が大量に水揚げされたというニュースもあったなぁ」
ミカン農家のシゲキさんがいう。
「同じ理屈じょん。ムール貝は海底の砂地の岩にびっしりくっつくと。水深が10メートル前後の海底だけん、そこにあることが分かっていても、一般の人にはとれん」
タジマさんは現在60歳だから、潜水歴はゆうに40年は超える。モグリと定置網の漁師で、『嘆きの海』の作者でもある。
天草環境会議30年誌は、タジマさんたち、苓北の漁師、農民が生きた30年史でもある。