トントン・パテルのお話し

        (6)


 「この水は、チチハリヤマの雪が溶けて湧き出たものだよ」
 タットばあさんは言いました。
「その証拠に、見てごらん。常に湧きだしているだろう」
 レミィは自分のコップを出すと、さっとすくって飲んでしまいました。
 「じゃ、わたしも」
 母さんのメイも飲みました。ブドンが続きました。そうなると止めようがありません。みんなが、最初はおそるおそる、そのあとは一気に飲みました。
 「あー、生き返った」
 ブドンが大げさに言いました。みんなが笑いました。いったい、何日ぶりの笑いだったでしょう。村から持ってきた水は、昨夜のうちになくなっていたのです。
 
 パテルは、もう一度、希望ということを考えました。希望とは夢見ることです。強く強く夢見ることです。白いもののない土地を探すこと。そして、いつか、故郷の村に帰ること。それは、ダーバからパテルの世代に引き継がれ、さらにその先のことかもしれません。


 ネコカラスが再び姿を見せ、みんなを誘(いざな)うようにいくども旋回しながら、チチハリヤマの向うへ飛んで行きました。

      (終わり)