トントン・パテルのお話し


(4)

「おう、これはひどいね」
タットばあさんは、ブドンの足を見て言いました。そして、乾燥したヨモギの葉を出して、少しの水で湿らせてからブドンの足に当て、包帯で巻きました。
「まて、まて。これじゃ、靴がはけん」
タットばあさんは、ブドンの靴をハサミでジョキジョキ切りました。
「あとは革職人のヨーテの出番だ。ヨーテ、ここにきてブドンの靴を縫ってくれ。きつくなく、ゆるくもないようにな」
ヨーテは几帳面です。細身で、少し神経質には見えますが、思慮深い、いい男です。
ヨーテは、きつくもなく、ゆるくもなく、と言ったタットばあさんの言いつけどおりにブドンの靴を縫い上げました。
「さあ、ブドンや、立ってみな」
タットばあさんにうながされて、ブドンはそろそろと立ち上がりました。

「ブドンの治療も終わった。さあ、出発しよう。森が終わるところで今夜は休むことにしよう。あと少し歩こう」
ダーバはみんなに声をかけました。

タラチネヤマは、つきたての餅が台の上で自然に流れて、そのまま冷えて固まったような形をしています。
出発してから二日目の昼に、ようやくタラチネヤマの頂上に着きました。白いものは、風に巻き上げられ、岩のくぼみで吹きだまりをつくり、まとまって大きな綿菓子のようなかたまりになっています。
村のみんなが頂上に立ちました。村の方角は、どこまでもどこまでも、白いものに埋めつくされています。悲しみの声がながれました。しばらくして、悲しみの声は祈りの言葉にかわりました。
「あと半日、遅かったら、わしらも白いものにのみ込まれていた」
丸い目のチーゴが、さらに目を丸くして言いました。
チーゴは、村では果物をつくっていました。ミカンや柿や桃などです。なかでもチーゴがつくる桃は、いい香りがして格段に甘いのです。
「さて、これからどうするかだが」とチーゴが言いました。「あのチチハリヤマはあまりに険しい。チチハリの峠は夏でも雪が降っていると聞いたことがある。遠回りになるが、チチハリのふもとを回っていくしかあるまい」
「そうだな。おれもそう思っていた」
ダーバもうなずきました。