じゃんけん市長


「じゃんけんって、やったことあるだろう。
いつの間にか、「最初はグー、じゃんけんぽん」が普通になった。
しかし、もともとはちがった。
「ぱっと開いて、じゃんけんぽい」。
これが正統。
しかし、これにもそれ以前があった。
「ハサミではさんで、じゃんけんぽい」。
これが原型」
「それで、なにがいいたいのだ」
「最初はグー、で始まると、パーを出す確率は50パーセント。
ぱっと開いて、で始まると、チョキを出す確率は50パーセント。
ハサミではさんで、で始まると、グーの確率が50パーセント」
「だから、なにをいいたいのだ」
「条件反射さ」
パブロフの犬か?」
「犬に梅干しを見せるとよだれを垂らす」
「うそだろう。犬が梅干しに関心を示すとは思えない」
「あ、そうか。梅干しによだれはきみだった」
「いったい、なんなのさ」
「行動パターンだな。最初はグー、といえば、50パーセントの人はパーを出す。
裏をかいて、チョキを出したいが、向うはさらに裏をかいてグーでくるかもしれない。
ここは心理の探り合いだ。
相手の性格と性癖を考えるんだ」
「大阪の橋下市長みたいだな」
「橋下市長がじゃんけんするのか」
「するもしないも、じゃんけんの達人という評判だぜ。百戦、百勝。大坂府知事も大阪市長もじゃんけんで勝って、手に入れた」
「ほんとか。じゃんけんの達人になれば、知事や市長になれる?」
「ああ、それどころか、首相にだってなれる」
「じゃんけんの達人の秘訣はなんや」
「よう聞けよ。まず、相手の意表を突く。じゃんけんをしようということになって、相手は、最初はグー、と思っている。そこへ、パッと開いて、とこられたらどうなる」
「そりゃ、面食らうわな」
「そこで、間髪をいれずに、じゃんけんぽい、とやる。まとめるとこういうことだ。まず、相手を混乱させる。そして、相手に考える暇を与えないで、次へ進む」
「でも、中には考えるやつもいるのと違うか」
「そりゃ、いるだろうさ。でも、そんなの最初から計算済みだ。要は、パッと開いて、といってチョキを出す人が50パーセントいればいい。たとえば、有権者が1000万人いたとして、そのうちの500万人がチョキを出してくれたらいい。民主主義を逆手に取った実に賢いやり方だ」
「そうか。それでこないだの大坂のがれき受け入れ説明会の時の、橋下さんの態度も納得できるな」
「会場は相当紛糾した」
「そこで橋下さんはこう言ったんや。会場のみなさんは反対といっておられるが、この会場の外にいる多くの大阪の市民の方々は、賛成してくれています」
「まさに、じゃんけん市長だ」
「秘訣はまだあるんだろう」
「もう、夜も更けた。それはこの次にしよう」