花街(はなまち)

Kurosuke2012-02-21

 その昔、ここは飲み屋街だった。通り全体に飲み屋とラーメン屋が軒を並べていた。
 その中に今、ぼくらは住んでいる。ぼくらが住んでいるところも、かっては割烹旅館だった。「洛水」といったらしい。
 ここ花街の中心は、「天劇」という映画館だった。
ぼくが高校生時代、この市には映画館が三つあった。洋画専門の「第一映劇」、邦画が中心の「松竹」、そして、邦画の中でも成人向けといわれる映画を上映していたのが、「天劇」だった。
 この界隈一帯は、花街とか桜街と呼ばれた。当時の大人の遊び場所だったのだろう。
 今日歩いていて改めて確認した。建物はあるものの、今も営業している店は、十軒のうち一軒か二軒だ。ほとんどの店がシャッターを下ろしている。人は老いてやがて死んでいくが、街にはあたらしい若者が現れ、維持され更新されていくものだろう。ところが残念ながらここにはそれがない。地方都市の悲哀か。
一方で、平成の広域合併でこの市は10万人弱の市になった。しかしここでも人が集まるのは、広域市の中でも中心市だけで、その中心市の飲み屋街がこのありさまだ。
 いったい、行政はなにをやってきたのだと思う。
 街づくりは一朝一夕にできるものではない。であればこそ、30年後、50年後のこの町の姿を想い描く必要があるだろう。そして、そのためにどうするか、それを考えて主導するのが行政の役割だろう。
 まったく、寒さが身にこたえる。