ツウナイト

結局、結婚式に行くことになった。
三人が一つの机に額をくっつけ合って、返信用のはがきに向かった。それから「参加します」に○をつけてトリサキ先生に渡した。
「オウ、オウ、オウ」と先生は意味不明の声を発した。そして、目じりに涙まで浮かべている。
「ありがと。ありがと」
トリサキ先生は、そう言っておれらの手を握った。こんなトリサキ先生を見るのは初めてだ。
モモコがいう「信頼」が大きかった。先生を信じ、自分を信じる。信頼がそうやって生まれるものなら、それに対して反対のしようがないじゃないか。
問題はなにを持っていくかだ。大人のように2万円も3万円も持っていけない。
「花束はどうかな」とモモコ。
「花束ね。女の子らしいな」とイクオ。
「あのね、もうちっと素直になったらどうなの。わたしたちのおこずかいを集めても3千円くらいでしょ。このあいだ、知り合いの焼き物屋に行ってみたけど、コーヒーカップだけで一つが3千円もするのよ。100円ショップのカップってわけにはいかないでしょ」
「花束でいいと思うよ」とおれ。
「仕方ない、今回はモモコ流でいくか」とイクオ。
「モモコ流ってなによ」
「モモコの意向に従います、ってこと」
イクオはすましている。
「これでいいのだ」
赤塚不二夫だったらそう言うだろう。