龍ヶ岳・外平(ほかびら)海岸



 外平海岸は、龍ヶ岳町樋の島にあります。樋の島は天草上島からも離れて、しかし、龍ヶ岳町の懐に抱かれるようにしてある島です。対岸は、不知火海をはさんで芦北、水俣です。
 10年ほど前に、ここに海水浴場計画が持ち上がりました。熊本県が計画をつくり、樋の島漁協が後押しをする格好でした。そして、この話が表面に出た時には、工事は始まっていました。
 ぼくも属していた『天草の自然を護る会』が工事の中止を求めて県と交渉しました。
 チリメン漁師の北垣さんが地元の運動の先頭に立ちました。県と話し合いを重ね、双方で共同の現地調査をし、工事は中止となりました。
 下の写真は、8年から9年前の冬の海の外平海岸です。
 昨日、久々に行ってみて、そういえば写真があったなあ、と思いだしたのでした。
 
 ウミサボテンとイソギンチャクです。
 最初のウミサボテンの写真の左下には、イカの赤ちゃんも写っています。


その当時書いた詩。


  何と戦うのか

たとえば 小さな島の 小さな海岸
奇蹟的に 唯一 残された 砂浜
朽ちた船の残骸が砂に埋まり
夥しい流木
カツオドリの死骸

だから?
ここを人工海岸にするのだという
コンクリートで固めた緩傾斜の護岸に
どこか 深い海底から採ってきた砂を積み上げ
夏の一時期
都会から海水浴客を呼ぼうと
それが 地元の意向でもあると

樋島 外平海岸は 北に開き
姫戸を望む
ここに砂浜が出来たのは
何万年と続いた海流
雨が溶かし出した山からの黄色い砂

それをたった三年で人工海岸にしようというのか
ミドリシャミセンガイが命をつないできたところ
夜な夜なウミサボテンが愛をかたるところ

遺伝子の片隅の
遠くなつかしい記憶
机の上の図面引き屋さん
蛍光灯の下の計画推進者さん

ニンジンイソギンチャクが
小さな泡を浮かべる
幽かなささやき

このようにしてわたしたちは生き
このように死んできた、と
幾万年
なにも語らず
なにも望まずに