木目石



 木目石と呼ばれる石がある。名前の通り、石に木目様の模様がある。
天草の西海岸は陶石の産地だ。この木目石は、磁器を作るさいの原料でもある。
 それから、刃物を研ぐ砥石にもなる。

 天草西海岸にごろごろしているこの石は、てっきり西海岸の荒波にもまれて丸くなっ
たものとばかり思っていた。でも、どうも違うようだ。いや、それももちろんあるが、そればかり
ではないといった方がいいか。
 この前、手ごろな石を探しに西海岸に行った。その時、波に侵食されて地層の断面が
表れているところがあった。

よく見ると、地層の最も下の部分にすでに丸くなった石が埋まっているのだ。
これはどういうことだ?波に洗われる前にすでに丸くなっているということは、
何万年も大昔に海にあって、その後、再び土に埋もれ、今また、波に洗われようとしているのか。

今立っているここも、長い時の中で、沈下と隆起を繰り返しているのか。


小さめのものを持ち帰って、穴をあけてみた。竹とんぼをさしてみる。

 長い長い時と、今の瞬間とが一つ所にあるようじゃないか。