灰の降る街
鹿児島、桜島。
見ている間にも噴煙が上がる。桜島そのものは漂う火山灰で見えない。
二年前にやはり鹿児島に来たことがあった。桜島を正面に見る鹿児島県庁は、いたるところ灰が降り積もっていた。
ちょうど二年前の10月、イさんと一緒だった。
彼女は、警告のために九州に来たのだった。警告? 地震の警告だった。
「九州とアメリカ東海岸で大きな地震が起こります」
そう彼女は言った。
「知った以上は伝えねばならない。 実は3月11日も知っていました。でも、大学の教授という私の肩書が邪魔をして伝えることができなかったのです」
「人は災害で死ぬかもしれない。でもね、死ぬことを知っていることと知らないことでは大きく違うのですよ」
今回の鹿児島行で改めて思い出した。