鶴岡のばあさん。

   鶴岡のばあさん


 鶴岡のばあさんは一人暮らしだ。
 山の上の家に一人ですんでいる。
 「寂しかないか、だって。ぜーん、ぜん」


 ほれ、デコポンが色づいてきたろうが。このデコポン、一個200円で売れる。
 一本の木で100は実をつける。そ、2万円じゃ。その木が50本ある。ぜーんぶでいくらだ?なんか、小学生の文章題みたいだな。
 じいさんがな、わしがいなくなった後も、これでなんとか食っていけるだろう、ゆうてな、植えてくれた。
 春になれば、草を引いて肥料をやり、5月には花の下で弁当をひろげる。夏には摘果とまた草引きじゃ。秋が過ぎ、11月に入れば鶴がこの上を飛ぶ。北から南へ向かって、幾日も幾日も飛ぶ。冬を越しに暖かいところへ行くんだろう。ここは昔から鶴見の丘で、この家は代々鶴岡という名前がついておる。


 せっかくきたんだ。庭の柿、ちぎって持っていけ。