鶴岡のばあさん 2

 今日、鶴岡のばあさんはよくしゃべった。

 よう来た、まあ、はいれ。
 わしな、昨日で満の90歳になった。それで思ったんだが、渡り鳥にすれば、もう、90回も海の上を飛んで行ったり来たりしたわけだ。
なんの、ツバメを考えてみい。タマゴから孵って、その年の秋には親鳥と一緒に南を目指して飛び立つじゃろ。
渡り鳥はな、小枝を口にくわえて飛ぶそうじゃ。疲れたらその小枝を海に浮かべて休む。あんまり疲れた鳥は、もう、飛び立つことができない。だから、浜辺には、その年死んだ渡り鳥の数だけ小枝が流れ着く。

ハ、ハ、こないだ誕生日前検診というんで病院に行ったが、医者がおどろいとった。
「頭が、ちいとおかしかばって、腹ん中はピッカピッカだ」