山と海と。

力持ちの男と女たちは
力を合わせて岩を動かした
 
冬至の日の出はあそこ
夏至はこちら

いつから決まっていたの
ずっとずっと前から
おじいちゃんよりも前から

山や海や風にくらべて
人間はあまりによわく
助け合わなくては生きていけない

麓に暮らすものたちよ
この山は冬の冷たい風を防ぎ
山に降る雨をあつめては
麓のあちこちに泉をわかせる
また山にかかる雲を見て
今日の天気と漁をうらなう

麓に暮らすものたちよ
われらが敬うのは
山と海であり
一切を照らしまた闇をつくる
太陽であって
地上の権威や権力ではない

しかしながら
麓に暮らすものたちよ
人間はあまりによわく傷つきやすい
砂粒の一つが目に入っても目は見えない
サルトリイバラの棘を刺しただけで歩けない


さあ麓に暮らすものたちよ
ここに舞台をつくろう
山の精と海の精と太陽の精が集う舞台だ
われらはあまりによわい
だから力を合わせよう
重くかたい岩を動かし
われらが生きた証を残そう
われらも海と山と風のなかまになって
われらの子どもとそのまた子どもをまもる

さあ もっと火をたけ
酒を注いでくれ
ほろびゆくものと
永遠とに乾杯だ