『天の魚(いお)』天草公演


 今日の公演のことは、7月の環境会議の際に番園くんから聞いていた。
 
 胎児性水俣病患者の孫と暮らす年老いた漁師が語る一人芝居だ。
 それにしても時間が経った。
 『苦海浄土』の作者である石牟礼道子さんは、今年亡くなった。砂田明さんが演じ始めたのは、1979年だとチラシにある。

 会場で植村先生と会った。
 「おれ、40年前に高槻で見たんよ。おれもだけど、一緒に見ていた連中はみんな言うんや。言葉がちっとも分からん」

 見ていてぼくも思った。天草弁だか、水俣弁だか、わかりづらい。天草で聞いていてもこうだから、全国ではチンプンカンブンだろう。老漁師が船の上で釣った魚を刺身にして食べる場面、「ブエン」と言われてもいまでは天草人でさえ、どれだけわかるか。

 終わってから植村先生と立ち話をした。
 「言いたいことがあったなあ。むかし、無機水銀が海に入ると有機水銀になるという博士論文を書いた学生がいたんや。この論文が何年たっても認められずに、とうとうその学生は自殺してしもうた。それから水俣病爆弾説を言い出した東大の教授もいた。そのあと、ダイオキシンの学会があって、おれは言うてやった。
 作って水俣病
 使って環境ホルモン
 捨ててダイオキシン

ふむ。けだし名言。