性善説と性悪説

人の性は、善か、悪か。
世界には大きく二つの説があります。
そう言われた。中学生の僕は、そうかと思った。
また、言われた。
日本は、単一民族の国家です。
日本は、農耕民族の国家です。
やはり、中学生のころだ。
それらがウソと分かるまでに30年かかった。

教師を責める気はない。
この国は、戦争をし、アジアを侵略した。
たくさんの命が失われた。この国でも、かの国でも。
しかし、本当に悪い奴は生き延びていて、
少しずつ子どもの心に植え付けていったのだ。
人の性は、善か、悪か。
二つのうちのどちらかであることを迫り、
三番目を切り捨てた。
白くやわらかな、生まれたばかりの善でも悪でもない魂のことを。

日本は、単一民族の国家であり、
農耕民族の国家です、と
騎馬民族遊牧民族に対しての優位を語り、
農耕民族は、平和主義者ですと結ぶ。
悪意の欺瞞。そして、欺瞞の連鎖。

この欺瞞の連鎖の上に原発事故は起こった。
この国の首相が終息宣言をしてから
一年になる。
人の性は、善か、悪か、
そんなことはどうでもいいのだ。
問題なのは、こんなにもやわらかくて
真っ白な命のことだ。