巨大クラゲの怪

潮の引いた砂浜を歩いていて、こんなのに出くわすとドキッとする。
重量は30キロを超えているのではないか。写真で茶色く見えているのは、脚(触手)。この日は、こいつも含めて五個体を見かけた。近年、その大発生が話題になるエチゼンクラゲなのか。でも、図鑑で見るとエチゼンクラゲは、カサの下に肩があり、脚はその下に付いている。同類のビゼンクラゲとみた方が正解かもしれない。
しかし、有明海で獲れるビゼンクラゲは、中華料理の「クラゲ」の主役ではないか。クラゲラーメンというものもあるらしい。クラゲの化粧品もあるとか。

うすいブルーのカサの部分を少し切り取って持ち帰ってみようか、とも思う。
それで、「今夜は変わりラーメンにしたよ」という。みんな、おいしいと食べるはずだ。おれのつくる料理には、絶大の信頼があるから、なんとかなる。もちろん、ラーメンの食材は秘密だ。おれはポケットのナイフに手をかけた。おれのポケットにはいつもナイフが入っている。そのときだ。雲仙の普賢岳の方角からかすかな風が吹いてきた。風はおれをつつみ、通り過ぎていった。おれは頭を振ってナイフから手を離した。


この夜のメインデッシュはキビナゴのてんぷらだった。