与作とロケットストーブ



与作がロケットストーブの暖かさにやっと気づいた。
そう、与作のいるそのあたりが一番暖かい。


それにしてもなぜ、山に引っ越すのだろうかと思う。
海に近い方が、空は広く、光もあふれている。暮らしやすく、開放的でさえある。


多分、こういうことだ。
ぼくが天草を強く意識したのは、東京へ行ってからだった。
そのもののただ中に居続けることは、おそらく、感性を鈍化させ、退化させる。
海の見えないところで海を夢見る。
光の少ないところで光を待ち望む。
過酷で残酷な日常の中で、シモーヌ・ヴェィユが神を待ち望んだように。