あつくしずかに語れ

     〜40年目のラブレター〜



君よ
あつくしずかに語れ
とおい空に雲がながれ
冷たい風が君をつつむ


君はしずかに悟る
この一瞬の中に君はいて
永遠の中にいることを
一瞬の連続が永遠なのではなく
永遠は一瞬のうちに宿ると


君よ
あつく語れ
そして しずかに語れ
地上の物語を語る 語り部のように
しずかに語れ
天上の恋を歌う 巫女のように
あつく語れ


君よ
未来のよろこびを語れ
語られることのなかった
やさしさと
人の哀しさを語れ
冷たい風の歌と
熱い海の物語を語れ
夜の光と
昼の闇について語れ


君よ
人の傲慢を語れ
ふるえる魂と
魂の祈りについて語れ


君よ
あつくしずかに語れ
真理は必ずしも正義ではなく
正義は真理ではない


この世界の不条理を語れ
排除される異邦人について語れ
あるべき世界
未来の王国について語れ
一瞬と永遠 
人の時間と
天の時とのちがいについて語れ


君よ
あつく語れ
しずかに語れ
きみが語るべきことは多い
わたしは
語りはじめる君を待つ