病院のベッドの上で
11月1日から『大陶磁器展』が始まり、ぼくは会場ロビーで幾人かの手作り作家の人たちと竹トンボやその他もろもろを販売することにしていた。
今年は前々から嫌な予感がしていた。
秋以降、いまだ何とか一人暮らしを続けている92歳の母親が急速に体力を落としていたこともあった。
9月にはすっかり人がいなくなった海水浴場で泳いでいる母子三人組と会った。上の女の子は三歳くらいで、全裸だった。ぼくが流木の丸太を拾って帰ろうとすると、母親が声をかけてきた。
「なんに使うのですか?」
「なに、やはり流木で作ったテーブルや椅子の脚にするんです」と答えると、
「あら、面白そう。展示するんですか」と興味ありげに聞いてくる。
「11月に大陶磁器展があるでしょ。そこの会場のロビーで、何人かと一緒に・・・たぶん・・・」
もう一回は10月になってから、サオリちゃんの両親が結婚のあいさつに見えた。サオリちゃんは一週間後に結婚式を控えていた。
「先生(カミさんのこと)には節目節目にほんとうにお世話になりまして」
帰り際、竹トンボがお母さんの目に留まった。
「これは売り物ですか」
「ええ、11月の大陶磁器展で・・・たぶん・・・」
そう、ぼく自身が半信半疑だったのだ。
あったのは、ぼくの入院だった。
10月26日の朝から下血があった。民医連のふれあいクリニックに行ってみた。院長さんとは会議などで顔を合わせる顔見知りではある。ぼくが現状を簡単に説明すると、じゃ、ベッドに横になってください…壁を向いて…お尻をこちらに向けて…ズボンを下げますよ…力を抜いてください…。かれは肛門に指を突っ込んだ。ふむ、出血している。この後すぐに地域医療センターを受診してください。紹介状を書きます。
そのまま、医療センターに一週間入院した。昨日、退院してきた。
カミさんはもとより、いろんな人に迷惑をかけた。
嫌な予感が当たったことになった。