半分の月



やっと半分の月にまで回復した。

16,17日と自然観察会とシンポジュムがあったが、どこか違和感が残ったままだった。
その違和感と憂鬱さを抱えたまま、次の週の日曜日には、フリーランスのジャーナリストの常岡浩介氏の講演会があった。
常岡氏は天草とは対岸の島原の出身だ。長崎放送で働いた後、フリージャーナリストを選んだ。チェチェンの取材を始め、アフガニスタン湾岸戦争後のイラクの取材など、彼の目は、民衆が犠牲となる紛争地域に向けられる。

そんな彼のもとに昨年八月、イスラム国からの連絡が入った。
「湯川春菜という人物について知りたい。
こちらで彼の裁判が開かれるので通訳として同席してほしい」というものだった。
常岡氏は同志社大学中田考氏と連絡を取り、九月初めに氏とともにイスラム国に入った。
しかし、この時は湯川さんには会えなかった。

そこで、帰国後、再度イスラム国へ行く準備が整った十月六日、突如、公安警察の家宅捜索を受けた。ビデオカメラやパソコンなどの取材機材が押収された。
翌七日が出発の予定だった。結局、常岡氏は出発を断念せざるを得なかった。

その後、後藤健二さんがイスラム国に拘束されるのが十一月、二人のことが日本のマスコミに出るのが、年が明けた一月だ。

「私は今、容疑者ですよ」と常岡氏は言った。

それにしても、あのタイミングでイスラム国へ行けていたら、日本政府がシリアではなく、トルコに仲介を依頼していたらと、常岡氏のこの国に対する不信と疑惑は募るばかりだ。


彼の講演が、ぼくの憂鬱に拍車をかけた。講演が悪かったのではない。講演がリアルであっただけ、じゃ、お前は何をしている?と問いかけられる思いがした。

さあ、どうして生きよう。
日々の糧と
世界をどう、つないでいこう?