トンビと昼飯

たまには海を見ながら昼飯を食おうと本渡港まで行った。ぼくは、おにぎりとから揚げの包みを開いた。
一羽のトンビが空高く飛んでいて、空も海も、全体が春の陽気に包まれている。
ところが、トンビは、旋回しながら高度を下げてくるではないか。車のすぐ上を何度か飛び、羽を広げて防波堤にとまった。5〜6メートルの距離しかない。
「おれにも一つくれないか」
トンビの目はそういっている。
から揚げの一つを車の外へ落してやった。すかさずトンビは滑空し、脚でから揚げをつまむと口に入れた。そして、旋回して元の場所にとまる。
「もう一つ」
トンビの目はそういっている。


もう一つをあげた。トンビは、同じく脚でつかんで口に入れ、旋回して戻ってくる。
結局、から揚げの大半はトンビが食べてしまった。