街中ギャラリー『イヌの記憶』


古い鉄材を使って不思議な作品を作る人がいた。
この作品、名付けて『イヌの記憶』というのだと。

「以前、美術館で個展をやった時に名付けたものです。こいつはオスで、もう一匹メスがいて、そっちは『イヌの記憶違い』というんです。
腹を空かせたイヌがいて、いつも食い物のことばかり考えている。で、いつの間にか自分がイヌであることを忘れてしまった。メスの『記憶違い』の方は、『記憶』の方に恋をして、それでやっぱり、イヌであることを忘れてしまった」

素材となっているのは、古い古いスクーターだ。

今回の目玉はこれ、『目出たい。』

「天草に行くんだから、タイをつくろうと思いましてね。全体は、馬の蹄鉄を溶接したものです。背ビレに使っているのは昔のレールの固定金具です。目玉は古いモーターのカバーです」

ほとんど宮崎駿の「ナウシカ」や「ラピュタ」の世界だ。



「鉄なのに、どれも温かみとユーモアがある。裸電球の明かりもとてもいい」
「ありがとうございます」
「鉄との付き合いは長いんですか」
「家が鉄工場でした」

なるほど。