掬(すく)う

行く先々で わたしは掬う
照葉樹の森から湧きだす泉
山間(やまあい)に流れる小川
精霊たちのささやき
音もなく舞う 光の妖精


行く先々で わたしは掬う
渚の白い砂浜
静かに満ちる 海
イトマキヒトデのつぶやき
不知火の海に輝く 白い光


行く先々で わたしは掬う
遠くに聞こえる 怒りの音
ささやかな 今日の喜び
それから かなしみの涙 
苦しみの声
この街で生きた 人々の証し


明日(あした)の風は通りすぎ
わたしの手には 残らない

 




?????????????????

「掬う」という行為。
渚で、小川で、冷たい湧き水のほとりで、あなたはなにを掬う。
「掬う」とは、その一部を掬うことだ。合わせた両手にいっぱいの、なにか。
この地上にあふれる貧困と絶望を救えるか。