オガワタカナ

2年前に市長選挙があった。それからしばらくして、ほぼ10日に一回の割合でわが家の裏木戸にタカナ漬けが届く。うちではオガワタカナと呼んでいる。
選挙自体は負けることが分かっていた。ただ、現職市長の無投票当選だけはさせない、それだけの思いで彼は出馬した。
何回か会議を重ねた。その会議の場所をとり、なんとなく流れの中で、おれが司会のようなことをやった。「司会のような」というのは、おれは話すことが不得意なのだ。一対一ならいいのだが、相手が複数となると、言葉はもつれ、自分でも何を言っているのか分からなくなる。あるいは、複数人のそれぞれの思いが、おれの言葉をかき乱すのかもしれない。
最終的に、参加者の意見は、半分、半分だった。市長選は見切り発車した。市長選のアナウンス原稿を書いた。それから、届け出に同席した。おれができることはそこまでだった。5000票余りをとって、選挙は終わった。
それ以来のタカナ漬けだ。冷蔵庫はタカナの匂いでいっぱいだ。