縄文

遠いとおい昔に
縄文と呼ばれる文化があった
しかし縄文とは
近代についた名だ
明治10年にE.S,モースは
偶然に大森貝塚を発見する
E.S,モースは生物学の学者だった
考古学でも何でもない


かれは貝塚から土器を持ち帰り
報告にCord Marked Pottery と書いた
これを訳したのが縄文だ
130年前のことだ
縄文研究はここから始まる
そして徐々に分かってきたことは
縄文の時代が豊かな時代だったということだ


豊かさとはなにか
人々が共同で家をつくり
シカやイノシシを狩り
クリやドングリをあつめ
海ではイルカやサケを獲った


豊かさとは
自分もまた社会の大事な構成員であり
なくてはならない存在だと思うことだ
人は食べ物と寝る場所と
なにより家族がいれば
それで充分ではないか


われわれは言葉の罠に陥りやすい
縄文 あぁ打製石器磨製石器の時代ね
石器は原始的
鉄は文明的
こんなふうに
しかし石の文化があり
鉄の文化もあった


それにしてもと思う
縄文の人たちは自らのことを何と呼ぶだろう
アヤカシか それともカリグラシか


現在のわれわれのことを
1万年後の人はなんと呼ぶだろう
戦に明け暮れ
ついには扱いきれない核によって
地上の生き物をふくめて
大半を滅ぼしてしまった人のことを