狐の嫁入り


宮崎は、重い雲につつまれていました。いまにも雨が降り出しそうです。
宮崎県庁前の通りには、宮崎各地の特産品を売るテントが並んでいます。
翌日の鹿児島は、雲が多いながらも青空が見えます。雨は降っていません。でも、桜島は黒い雲に覆われています。ときどき、青い空から雨が降ってきます。
キツネの嫁入り、ね」
李(イ)さんが、後ろの座席で言います。
「でもね、韓国では“トラの婿入り”というんですよ。面白いでしょう」
キツネとトラ、それに「嫁入り」と「婿入り」、面白いですね、というと、
「韓国では、16世紀や17世紀まで子どもがある程度大きくなるまでは、お婿さんはお嫁さんの家で暮らしたのです。日本でも、そうだったでしょう」
そうなのだ。日本の中世でも「婿入り婚」が普通だった。
「だから、私は、こう思うのです。韓国の“トラの婿入り”が先で、そのあとで“キツネの嫁入り”になった、と」


しかし、李(イ)さんは、「キツネの嫁入り」の話をしに来たのではない。
彼女は、中央大学総合政策学部の教授なのだ。その彼女が、文字通り、先週の土曜日に天草に飛んできた。
ささやかな環境イベントで「笑顔のお祭り」というのが、先週の土日にあった。天草の西海岸の鬼海ヶ浦が舞台だ。
鬼海ヶ浦は、東シナ海に向けて開けた小さな集落で、そこに“風来望”というゲストハウスがある。「お祭り」は、そこが中心だった。


李(イ)さんは、九州からメッセージを発しようと思った。なぜなら、年内にも起こるだろう大規模被災地が九州であるからだ。
「地球は生命体です。その地球が病気になっています。地球は、病気を治そうと自浄活動を始めました。わたしたちは、「瞑想」を通してこのことを知りました。そして、近いうちにアメリカのボストンと日本の九州で大きな地震が起こることが分かりました」
地震震源域が海底なら、津波が襲うでしょう。震源地が内陸部だったら、火山の噴火を誘引するでしょう」


宮崎県庁と鹿児島県庁の記者会見を付き合った。
いっさいが、夢であることを願う。