しゃべるネコ

クロスケのやつ、どうも自分のことをネコとは思っていないようだ。
夜中の3時、4時になると決まっておれを起こす。
「腹が減ったからメシをくれ」
「外へ行きたいから窓をあけてくれ」
そのたびにおれを起こす。隣で寝ているカミさんは起こさない。
起こし方がネコらしくない。
クロスケは、まず、おれの耳元に顔を近付ける。クロスケのヒゲが顔にあたる。くすぐったい。これが第一段階だ。
これで起きないとなると、おれの枕もとで座り直す。そして、ムニャムニャ、フニャフニャ、ピチャピチャとつぶやきはじめる。
はじめはエサを食っている様子を示して、
「腹が減ったから早く起きてエサをくれ」という合図だと思っていた。
しかし、最近思った。こいつは、しゃべっているつもりじゃないか、と。
そういえば、と思い当たるフシもある。
ストーブの前でおれとカミさんがしゃべっていると、真ん中に来て交互に顔を見ている。
息子が加わって3人の会話の時も、やはり、真ん中にいる。


クロスケは、手を器用に使う。
秋に栗飯をつくろうと栗をむいていた。クロスケは、ザルに手を伸ばして栗を取り出す。その栗でネコサッカーを始める。やがて栗は、冷蔵庫の下やタンスの奥に入ってしまい取り出し不可能になる。するとまたやってきて、ザルから栗をかきだす。
ハエのとり方も独特だ。
部屋を飛んでいるハエをとるのに狙いを定めてジャンプする。そして、両手でハエをパシッとたたく。そう、人間が蚊をたたくように。


夕べも枕元でしゃべっていた。今夜もしゃべって起こすだろう。
おかげで最近、寝不足の日が続いている。