『信じる』

息子の部屋で
わたしは1円玉と十円玉を拾って歩いた
粗雑に作られたザルから
あらゆるものは こぼれおちた


先日 息子は都会へと旅だった
「なんとか やっていけるよね」
「ああ なんとかなるものだよ たぶん」


わたしは 条理を信じようと思う
うながされることなく 夜が明け
嵐は 過ぎ去り
生きていることは 死を孕み
それでも 存在の輝きは
この大気に 満ち満ちているのだ


息子よ 粗雑なザルはおまえの個性だ
抜け落ちていくものは 落ちるにまかせよ


やがて ふんわりとして大きく
どんな粗雑なザルからも 
こぼれおちることのないものが止まるだろう


わたしは条理を信じる
粗雑なザルこそが
真理を掬い取ることができる、と


なぜなら 真理とは
わたしたちの存在をはるかに越えて
大きいものであるからだ