海の嘆き

彼女は渚で貝を拾う。
巻貝や二枚貝や、それらの欠けたものや穴の開いたものを拾う。くりかえし拾う。
彼女は、今一人で生活する。
時間までも漂白されたような秋の光の中、彼女は拾い集めたたくさんの貝をひろげ、決して楽しいことばかりではなかった暮らしの記憶を形にしようとする。
「この貝は、鳥に似ている。ほら、これがくちばしで・・」
別の貝殻には小さく目を描いてみる。
「なんか泣いてるみたいだよ」
悲しみや嘆きは、あまりにもそこらにあふれていて・・。
彼女は、この秋に始めて知る。それから、しずかに共感する。