なんかな〜

 

 最近、こんなものを作っている。

 十一月に『大陶磁器展』があって、出店依頼があった。焼き物ではない。犬だか馬だかわからない竹で作った小物を売る。
 以前は、陶磁器展とは別の場所でやっていたものを去年から同じ会場の空きスペースを利用してやっているらしい。らしい、というのは、去年は参加しなかったからだ。
 それにしても、なんかすっきりしない。もうちょっと作りようがあるのではないか、とも思う。
 


 
 あやしいおじさん


 九月の中旬から下旬にかけて大きな台風が二度、来た。台風は、ときおり南方のめずらしい蝶を運んできたりする。

 十月になって、あやしいおじさんが徘徊していると、近所で噂になっている。
 頭には変な帽子をかぶり、上半身裸で、半ズボンをはいている。話しかけても、言っていることがさっぱり分からない。後をつけていくと路地に入ったところで、消える。
 宇宙人ではないか、という人もいる。普通の人間なら十月の、すっかり肌寒くなったこの時季に上半身裸で半ズボンというわけにはいくまい。

 今朝のことだ。
 寝坊したキョンキョンがバタバタと学校へ行った。
 ごみ出しに行ったときに、そのあやしいおじさんとばったり会った。緑の半ズボンと、やはり緑の、お椀をひっくりかえしたような縁なし帽子をかぶっている。あごに手を当て、へらへらと笑っているように見える。なぜだかモリアオガエルを連想した。
「おはようございます」と言ったら、
「ほにょら、ほにょら」と返ってきた。
「あの、ほにょら語はわからんのですが」と言うと、
「ほにょら、ほにょ、ほにょ」ときた。
 さっぱりわからない。やっぱり、宇宙人なのか。
 おれはごみ袋を置いて、家へと歩き出した。振り返るとあやしいおじさんが付いてくるではないか。とうとう家の前まで来た。
「なんか、用事ですか」
「ほーにょ、ほにょ、ほにょ」
 まるで、ウグイスと話しているようだ。
「どこから来たのですか」
 あやしいおじさんは空を指さした。やっぱり。
「お茶でもどうですか」
「ほにょ、はにょ」
 こちらの言うことは分かっているようだ。
 玄関を開けた。おれが先に入った。続いてあやしいおじさんが入るものと思っていた。待っても入ってこない。表を見た。表にはだれもいない。帰ったのかと思って、ドアを閉めて中に入った。すると、いた。テーブルに座ってへらへらしている。
「お茶はなにがいいですか。コーヒー、紅茶、それとも焙じ茶?」
 最後の焙じ茶のところで「ふにゃ」と聞こえた。そうか、焙じ茶がいいんだな。
 おれは焙じ茶をいれた。
 あやしいおじさんは一気に飲んだ。飲むというより、流し込む感じだ。ネコ舌のおれはちびちび飲んでいるのに。

 電話が鳴った。キョンキョンからだ。
「宿題の感想文を忘れてしまって」
「わかった。届ける」
 すると、あやしいおじさんが、
「ふにゃら、ほにゃら」と自分の胸を指している。
 どうも、自分が届けると言っているようだ。
 じゃ、頼もうじゃないか。
 キョンキョンの感想文を渡した。
 あやしいおじさんは、
「ふにゅ」と言って、消えた。


 帰ってきたキョンキョンが言った。
「びっくりした。じいちゃんに電話して教室に帰ったら、おれの机の上に感想文があるじゃないか」