春の嵐


 与作が、具合が悪そうにしていた。それで、獣医の悟郎さんに電話した。夕方の6時半過ぎのことだ。悟郎さんは「今から行きます」といって、7時には来てくれた。ぼくは晩飯の支度中で、今日の献立はコノシロ尽くし。メインはもちろんコノシロの刺身、それに三枚に下ろした後の中骨と腹骨の骨せんべい。この時季のコノシロは卵を抱えているので、そいつの煮つけ。豆腐とネギのの味噌汁。「食べていきませんか」とカミさんが声をかける。こうして、治療が終わった悟郎さんが食卓につく。ところが今日はムスコ君が夜勤なので米は二人分の一合しか焚いていない。味噌汁も二人分しかない。しかし、刺身だけはふんだんにある。三人で食卓を囲んで刺身をつつく。悟郎さんは、食べながらしゃべる。話すのと食べるのと、どっちがメインだかわからない。9時が近くなって、空の食器を持ってぼくが立ち上がった。食器を流しに置いたところで、車の音がした。ムスコ君が熱を出して、職場から帰ってきた。悟郎さんが腰をあげた。

 そのあと、カミさんがお腹をこわした。
 表は強風が吹き荒れている。

 

 タラの木は、まだ冬枯れのままだ。