アブラル・ドナルの憂鬱



乾いた空気と容赦のない太陽は
地上にいくつもの墓標の丘をつくった

他にはどんな理由もない
戦争も飢餓も
伝染病も
放射能

一つの墓標の丘には
三百年の命が眠る
三百年?
その間に生まれ
死んでいったもののすべて

生まれて目が開き
父母の言葉を聞き
立ち上がり
初めて自らの手で掴み 食べた
命の一つひとつ

墓標の丘は
幾千億個の砂粒からなり
丘は連なり 果てしなく連なり
太陽は照りつけ
乾いた風が 新たな砂を運ぶ

まったく
他にはどんな理由もない
戦争も飢餓も
伝染病も
放射能

他にはどんな原因もない
暗愚な指導者も
今日があったように
明日もあると信じた
善良な民衆も原因ではない

ここには
ただただ 照りつける太陽と
乾いた風と
一つの砂粒となった魂の骸があるだけだ