これよりやさしさの王国


七月
列島は梅雨の最中
暑かったり 寒かったり
雲は湧き 雲は流れ
月は夜毎に細くなり
命が一つ途絶えた


新宿中村屋
ぼくたちの結婚式
五歳の君が歌ってくれた『森のクマさん』
歳月は流れ
歳月は しかし
だれも幸福にはしなかった
だれ一人として
きみの居場所は時間とともに狭まり
とうとう最後の場所
病院


きみは やさしさの王国にたどり着いたか
きみは 光の中にいるか