ひなたぼっこ

天草は、九州の西にあって、長崎の南にある。日本海側に雪を降らせる冬の寒気の、つまり、はずれにある。だいたい冬のあいだは曇って北西の季節風が吹き、さすがに雪はめったに降らないが、陽射しがふりそそぐ日は、一週間に一度あるかないかだ。
そんな稀の、晴れた日の屋根の上で、チビスケはお日さまを浴びる。

チビスケの、この満ちたりた顔。
思うに、ネコの脂肪には蓄熱効果があるようだ。チビスケは寒くなって、最高気温が20℃を切るころから盛んな食欲で、実によく食べ、せっせと脂肪を蓄えた。こうして、チビスケから「デブスケ」になった。
一方の与作はどうかというと、相変わらずスリムだ。脂肪とはほど遠い。寒い日は、一日ストーブの前のソファで寝ている。

めったに外出しないし、出てもすぐに帰ってくる。寒さには、断然チビスケの方が強い。あるいは、チビスケは北方系のネコで、与作は南方系のネコかもしれない、と思う。
この二匹、今日の午前中はやたらと元気だった。「運動会」から「椅子取り合戦」まで一通り遊びのメニューをこなした。おれは、ネコどもをよけながら、炊飯のタイマーを十一時半にセットした。カミさんは、午後一時からの勤務で、家を出るのが十二時四十分だ。ところが、さあ、食べようかと炊飯器のふたを開けたらどうだ。米はセットしたままの状態でお釜の底に沈んでいる。コードをたどると、差し込みがコンセントから抜けている。ネコどものせいだ。走り回っているうちにコードに引っかかって抜いてしまったに違いない。仕方がない。ここからあらためて炊飯のスイッチを入れた。
十二時二十分に飯が炊けた。十分で飯を食い、弁当を詰め、今日はおれが送っていった。
与作は、獲物を狙うトラ族の眼付きで、屋根の上で昼寝するチビスケを見ていた。