ほめ殺しのよっちゃん 3

 ほめ殺しのよっちゃんは、今夜はあったかいそばを食べた。
 そばを食べ始める前に、布団の中に湯たんぽを放り込んでおいた。なにしろ、寒いのだ。夜は特に寒い。「寒いの、寒いの、飛んでいけー」と叫びたくなる。
 でも、寒さは動かない。まるで、退場したと思っていたら出てきた自民党のダイナゴン・安部のようだし、民主党のヌリカベ・野田のようでもある。
 巷には選挙カーが走り回っている。よっちゃんは気が重い。ほめる言葉が見つからないのだ。よっちゃんの足元では、与作とチビスケが走り回っている。
 この与作とチビスケはあたらしい関係に入ったようで、二匹でよく遊んでいる。与作にはもともと敵意という概念がない。出会う人間、ネコ、すべてが友達なのだ。最初、こんな与作に面食らったのがチビスケだった。チビスケは、少しばかりの先輩として必ずしもいい人間、いいネコばかりではない、と学習した。近所を徘徊する尻尾の短い黒ネコは、それは敵意丸出しで襲いかかってくるし、遊びにくる女の子はネコの抱き方を知らない。ところが与作ときたら、みんな友達だと近寄ってくるではないか。これはだめだと思い、チビスケは与作に少し教育をした。
 「与作、みんなが優しいわけじゃないよ。突然蹴飛ばす人間もいれば、問答無用と噛みついてくるネコもいる。予防だ、与作」
 与作は眼を丸くして、首を傾げる。
 「おいらは、信じることを選びたいな。だってさ、そっちのほうが楽しいじゃない」
 どうも見ていると、チビスケの方が根負けしたらしい。
 それでこのところ、追いかけっこをし、一日の半分は二匹で寝ている。