誕生日のころ

 だいたい3年に一度、誕生日のころに運転免許の更新がある。前回は3年前だったが、その前は5年だった。で、今回は、また5年に戻った。シートベルトの引っ掛け作戦が功を奏した。シートベルトは、カチンと差し込まない。肩に引っ掛けるだけだ。お巡りさんには分からない。いや、こんなことはどうでもいい。
 11月の半ばを過ぎると、一つ一つと冬仕様になる。ズボン下を履くようになり、ストーブの準備をする。重くて厚い布団をかけるようになる。が、これもどうでもいい。
 だいたい誕生日のころになると人生を考え始める。こう書くと脇から声がする。
「人生を考える」は、大げさすぎるんじゃないか。どこから見ても「想う」、だろう。それも、ぼんやりと。
そう言われるとミもフタもないじゃないか。
だいたい11月はぼくの誕生日から始まって、一週間後にはカミさんの誕生日がくる。カミさんの誕生日がくれば、クリスマスイブまで一カ月だ。そして、このイブの24日は、29年前、タカシくんの発作がおさまった記念すべき時なのだ。それから正月がくる。
埼玉に暮らしていたころから、ぼくの誕生日から始まって、正月までを「お祝い月間」と呼んでいた。お祝い月間は、実に三カ月にまたがる。
お祝い月間の特徴は、気が大きくなることだ。
『鍋』と言ったら、普段は白菜と大根と魚のすり身くらいなのが、鳥のぶつ切りも入れちまえ、ということになる。困ったことだと、気づいたのは最近だ。うちの貧乏の原因は、お祝い月間にあったのじゃないか。
昨夜は、ホウレン草のパスタだった。今夜は、セロリと人参と玉ねぎをむらし炒めして、野菜だけのスープカレーを作っている。
昨日が、ぼくの誕生日だった。