大陶磁器展


何回目かの大陶磁器展。
毎年11月の初め、やきもの屋さんたちの懐かしい顔がそろう。
今年は遠くからの出展が目立つようだ。宮崎や山口といったプレートがある。
その山口の彼とは、4月、阿蘇高森で一緒だった。
「おれには師匠はいない」と豪語していた。東京で劇団に所属していた。それが、どんなつながりがあったのか、山口で窯を開いた。
「窯も自分で作ったさ。見よう見まね、試行錯誤よ」
釉薬に塩を使う。ヨーロッパの技法らしい。急須があった。
「なんか、これって緑茶をいれるというより、やっぱ紅茶じゃない?」

歩いていたら、去年の顔に会った。
ブースの真ん中にドーンと火鉢。210000円の値札。おれの顔を見るなり、
「ここへ座ってて」という。
「ちょこっと一服してきます」
仕方なくいすに座っていると、女性の三人連れが、火鉢を囲んだ。
「これ、いいわね」
「わたし、これ、買います」
最も年配の女性は、日本語がたどたどしい。大丈夫か。21000円じゃなくて210000円だぞ。

「あら、こんにちわ」
声をかけられた。マンが茶碗の彼女で、彼女とも阿蘇で一緒だった。それも、おれのブースのとなりだった。
「売れてますか」
「まあ、ねえ。日曜日の雨がひびいたみたい」
「今年はこれで終わり?」
「来年の三月のグラン・メッセまでないのよ。一年分作っちゃおうかな」
「これって、作るのに時間がかかるでしょ」
「そうね。形をつくるのに一時間かな。乾かして、線描きして、色入れで二時間」
「100個つくるのに、300時間じゃないか。一日、6時間やるとして50日だよ」
「でも、一日12時間やれば、25日。15時間やれば20日よ」
それにしても、こんな絵を一日15時間も描き続けられか?