夏の鍋


ジメッとして暑いですね。こんな日は、どうです、思い切って鍋にしませんか。
暑い日の鍋ですか。汗が出ますよ。
だから、いいんです。おもいきり汗をかいて、体中のモヤモヤを出してしまうんです。
出ますか、汗といっしょに。
経験からいって、出ます。
それじゃ、思い切ってキムチ鍋とかですか。
いいですね。キムチ鍋でいきますか。
ちょうど、冷蔵庫にキムチが残っています。野菜はキムチのほかに何を入れましょうか。ネギは入れますか。
ネギ、それ、決まり。あとは大根も入れましょう。
ところでメインの具材ですけど、肉系ですか、魚系ですか。肉系だったら、鶏肉ですか、豚肉ですか。魚系だったら、鯛ですか、ブリですか。それとも、タラかサケにしますか。ホタテやイカ、タコもありますけど。
この際だから、全部入れましょうか。
鍋からあふれますよ。それに二人で食べきれますか。
みんな、二つずつ買いましょう。それから、買い物はスーパーでなく、商店街に行きましょう。スーパーだとパックで買うことになりますからね。
行きますか。二人で。
行きましょう。仲よくお手手つないで。
あやしい関係とみられませんか。髪はぼさぼさだし、髭は伸びているし、全体に薄汚れた感じでしょ。目立ちますよ。
いいじゃありませんか。人生、楽しく、ですよ。
おじちゃん、魚屋のおじちゃん。ブリと鯛の刺身、二切れずつちょうだい。ついでにイカとタコの足も二本ずつね、先っぽの方でいいから。それと、ホタテが一つね。半分に切るから一つでいいのよ。大根のツマだけはいっぱい入れてね。ほら、これで大根は買わないですんだ。
わたしたち、節約の天才ですね。
にいちゃん、肉屋のにいちゃん。手羽先二本と豚バラ20グラムちょうだい。
100グラム100円の豚バラが20グラムで20円と、グラム85円の手羽先が二本で35グラムだから・・・。えい、面倒くさい。持っていけ。
肉屋のにいちゃん、ありがとう。


さ、材料は揃いましたよ。すごい、すごい。贅沢鍋と名付けましょうか。
いえ、いえ。空(から)鍋と呼びましょう。だって、キムチのほかにはまだ何も入っていないのですから。