展示会


5日間にわたる、じいちゃんの展示会が終わった。
「秋の陶芸祭り」に便乗させてもらったのだ。
「陶芸祭り」なのだから、当然来る人は焼き物を求めてくる。そんな人の中で、「おや」と思ってのぞいてくれる人は、10人に一人くらいだ。
おれも、連休の3日間つき合った。
本来、照れ屋で、はにかみ屋で、小心者(これはばあちゃんの言葉だ)のじいちゃんが自分が作ったものを人前に出すことがどんなに大変なことか、よくわかった。
じいちゃんはみんなに背を向けて、ノコギリをひいたり、ドリルで穴を開けたり、ナイフで削ったりしているばかりでちっとも顔を上げない。今は売る時なのに。
結局、おれとばあちゃんが応対することになる。
「これはなんに使えるのですか」
お客さんに聞かれる。おれはじいちゃんの手を引っ張って連れてくる。
「あ、あのう、これは「考える猿のための腰かけ」という名前がありまして、人間にとっては「踏み台」ということになります」
おれはこの時、じいちゃんの思いが分かった気がした。要は、じいちゃんは単に踏み台としてしか見ない人に売りたくないのだ。


キョンキョン、疲れたな」
「そうだね」
おれは、じいちゃんの「疲れたな」の意味が少しだけ分かった。